1956年から手づくりで最高のトランペットを製造し続けるシルキー社を訪問しました

マイルス・デイビスを始め多くのジャズ・トランぺッターが使ったマーチン・コミッティーは、レノルド・シルキー、エルディン・ベンジ、フォスター・レイノルズの3氏が作り上げた名器ですが、主導的にデザインをしたのはシルキーだったと言われています。そのシルキー氏の革新的なデザインで1956年から高品質のトランペットを作り続けているのがSchilke Music Productsです。

修理をお願いしてあった楽器の受け取りを兼ねて、シカゴのオヘア空港近くにあるシルキー社を訪問しました。玄関を入ると整理整頓されたレセプション、その右奥の試奏ルームに続くホールウェイ―の先にはシルキー・アーティストである高橋さんのポスターが掲げてありました。

試奏ルームには、HCモデル以外の全てのシルキー商品がズラリと並んでいました。まず目を引いたのがゴールドプレートのピッコロ! 思わず、リペアーマネージャーのベネットさんに(下の写真)”Is this for sale?”と聞いてみたところ、これはオーナーのニューマン氏の所有していたモデルで試奏用なので、”No”との事。ゴールドプレートは半年待ちなので、シルバーをリプレイトするアーティストが多いそうです。

リペアー担当のニックさん(下の写真)、B3 をチューニングベルに改造作業中でした。70年代のベリリウムベルの凹みの修理について聞いてみたところ、昔は本当のベリリウムを使っていて非常に軽くて脆いベルだそうで、修理には細心の注意を払わないと割れてしまう事があるとの事。

John Faddisの名札が付いたゴールドのS42Lがありましたが、なんとFaddis氏ご自身のトランペットでした。良くみるとチューニングベルのスライド金具の部分が僅かに凹んでいました。Faddisのベルは通常のベルよりさらに薄く軽いので修理が大変そうです。

全てのモデルのパーツが揃っていました。何点か欲しいパーツがあったのですが、基本的に全てのパーツはディーラーが取り扱う事になっているとの事で譲ってはいただけませんでした。ディーラーを大切にするシルキーのポリシーです。

ズラリと並んだマウスピース。材料となる真鍮は、長年、通りの向いにある会社から仕入れているそうです。ちなみに全ての材料は”Made in USA”で、又全てのパーツはこの工場で手作りされているとの事。

50年代にシルキー氏ご自身が使っていた、マウスピースを複製する機械が大切に保存されていました。当時使っていたパーツも全て保管されています。最後の微調整はシルキー氏自身の手作業だったそうです。

マウスピースにモデル番号などを刻印するツールも、同じものをずっと使い続けているそうです。確かにバックは年代によって刻印が違いますが、シルキーの刻印はどの年代も変わっていません。

他の最新の工作機械と違って、ヴィンテージとも言えるマウスピースに刻印する機械です。今でもこのツールで1本1本手作業で刻印されています。

シルキーのマウスピースはカップの中もツヤツヤに磨かれていますが、1本1本手作業で磨いていました。他のメーカーではコスト削減で省かれている工程なのだそうです。

最終調整を待つバルブケーシング。モデルによって上のケーシングがニッケルシルバーのものとブラスのものがあります。1つ1つ厳しいチェックを行い、スペックとの誤差があれば、不良品として分解して溶かしてしまうのだそうです。上の棚には完成品より多くの不合格のケーシングがありました。

全員がシルキーロゴのT-shirtを着ていました。ダメ元で何枚か売って欲しいと言ってみたのですが、「サイズがあまり無いので・・」とやんわり断られてしまいました。やはりブランドを大切にしているという事なのでしょう。

S42Lやソロイストシリーズはサイドシームベルを採用していますが、これらはシームレスベルで1本づつ手作業で、パイプから引き延ばしていました。

ベルの形状の元になるマンドリルです。ピッコロからトロンボーンまで何種類ものマンドリルがありました。

これらはパイプ用のマンドリルの数々、創業当時から使っているものもあります。ちなみにシルキーはラージボア以外は全てステップボアデザインを採用しているので、チューニングスライド、バルブ、1,2,3番管のボアサイズが微妙に違います。

ベルを曲げる職人さんの部屋。1本1本手作業で作業をされていました。シルキーは社員全員で30名強、1週間に完成するトランペットは16~18本程度、フリューゲルホルンは2本程度、トロンボーンも2,3本だそうです。いかに丁寧なモノ作りをしているかがわかります。

シルバー、ゴールドプレイトは創業当時から近くのAnderson Platingでなされるのだそうです。無垢のシルバーで出来ているかと思うほど美しく、またシルキー独特の濃い色合いを持つゴールドプレートの所以です。 最終チェックを終えたシルキーが並んでいました。

Shipping Roomからは世界中に出荷されていました。ちなみに私の楽器はバルブケーシングの接続部分のパーツに僅かに亀裂が見えたので修理をお願いしたのですが、補償内との事で無料で対応していただきました。私は直接受け取りに行ったのですが、米国内なら無料で発送してくれるそうです。

やはり修理してくれる人の顔が見えるというのは、安心感がありますね。シルキーのスタッフは創業者のDNAが活きているのだと思いますが、アフターケアーも素晴らしいです。

前もって予約が必要ですが、ベネットさんの都合がつけばファクトリーツアーをしてくれます(ただ営業時間は7amから3:30pmです)もちろん、存分にシルキーの試奏もできます。シカゴには見どころも盛りだくさん、観光も兼ねてシルキーを訪れてみてはいかがでしょうか? 職人さんが1本1本丁寧に手作りされている様子を目の当たりにすれば、楽器への愛着も一段と増す事でしょう。

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