カール・サンダースのインタビュー記事と動画があったので要約してみました。Carl Saunders Interview Vol. 2

Vol.1 に続いてBrass  Chats Episodeのカール・サンダースのインタビューと、カール・サンダースのオフィシャルページそしてArtistinterview.euのインタビューの要約をしています。私は翻訳のプロでは無いので、もし違っている部分があれば、すみません、ご指摘いただければ有難いです。


Carl Saundersは高校を卒業してすぐに憧れだったスタン・ケントンのバンドに入ったわけですが、そこで予想外の経験をしたそうです。「私は絶対音感があったのですが、ケントンのバンドでメロフォニウムを吹くと、どうしても音が高く聞こえてしまって、しまいには絶対音感を失ってしまいました。仕方が無いのでタイムに集中し、スウィングのエクスパートになるようにしました」「ビッグバンドをスウィングさせるのは簡単ではありません。何故なら何人もで演奏するからです。ベイシーバンドがスィングするのはお互いを知り尽くしているからで、遅れる時も走る時も全員が一緒だからです」

また、スタン・ケントンについて複雑な想いも語っています。「とにかく毎日がノンストップでした。仕事の後ダイナーで食事をするのですが、スタンは何であろうといつもメニューの中で一番高いのを注文して、ウォッカのボトルを必ずテイクアウトしました。そして空にしました」

「ある日サラダを注文したんですが泥酔していて、サラダオイルのキャップを開けてかけ始めたんですがオイルが溢れてテーブルに流れだしました。今度はヴィネガーをかけ始めたんですが、しまいには床も、彼のズボンもドレッシングだらけになりました。私は見ていて涙が出て来ました。ケントンは私にとって音楽では父親同然でしたので。本当にショックでした」

ハリー・ジェイムスのバンドのドラマーだったバディー・リッチと一緒にバンドを始めた時のエピソードです。「言うまでもなく彼のバンドは完璧にタイムをキープしていました。メンバーを掌握するためなのか、いつもミスのあら捜しをしていました。ソロの時にわざとビートを逆にして混乱させようとするんですが、その罠にハマるまいと皆んな必死にカウントしました」

バディー・リッチはカール・サンダースを3回首にしたんですが、2度目と3度目の時、カールはバディーの振る舞いを批判しています。最後には円満にバンドを去ったのですが、皮肉な事に直ぐ後でレコーディングがあって、彼のポジションを埋めた若きチャック・フィンドレ―の方が有名になりました。カールはラスベガスでフランク・シナトラ、ポール・アンカ、トニー・ベネット、エラ・フィッツジェラルドなどのバンドを経て、1980年代にロサンゼルスに移ります。

「ロサンゼルスには、いわゆるリハーサルバンドと呼ばれる素晴らしいバンドが沢山ありました。ボブ・フローレンス、ビル・ホルマン、ジェラルド・ウィルソン等々、皆なジャズが大好きなベテランばかりで、お金のために演っている人は一人も居ませんでした。リードとして私の唯一の仕事で、レコーディングもしましたが、今までの中で間違いなくベストといえる仕事でした。しょっちゅうリハーサルをしていましたし、バンドは一体感も存在感もあって、ほとんどベイシーバンドのようでした。


(Interviewer)完璧なリズム感をお持ちで、”スィングする秘訣はビートの頭をキープして走らない事”と言っていますね。
(Carl Saunders)ビートには真ん中があって、全員が真ん中で演奏すればそれはそれで素晴らしいんですが、そうはなりません。何故なら皆んなタイムよりも自分の音に集中してしまうからでしょう。サックス、トロンボーンましてやリズムセクションまでもが何故かビハインドになりがちです。もちろん逆に走ってしまう神経質な人もいますが。

私はいつもスィングするメカニズムを考えていました。クラブに行ってドアを開けた途端に演奏が聞こえてくるとします、でも友人との会話は続けますよね。その理由はバンドがスウィングしていないからです。もしスィングしていれば会話はありません。何故ならスウィングするビートが催眠術のようにあなたを虜にしてしまうからです。

ノーステキサス大学のジャズ専攻の学生にクリニックをした時「ジャズの定義は何ですか?」と聞いたんですが、誰一人として答える事ができなかった。皆んなジャズをやろうとしているのにです。そこで、私はジャズとは「Intellectual funk with a hypnotic beat」だと言いました。もちろん、もっと良い定義があれば教えてくれとも言いました。

長い間スウィングするという事を考えてきた理由は、スウィングこそがジャズで、そしてジャズミュージシャンが本能的に体得していないといけない事だからです。遅れも走りもしない一定で、そして自然にビートを刻み続けること、これができれば観客を催眠術にかける事ができます。もし少しでも遅れたらそれは終わりです。観客がバンドに聞き入っていれば、それはバンドがスウィングしているからで、観客は催眠術にかかっているんです。

(I)スウィングしない理由の1つとして、リーダーの友達が多すぎるからと言ってますが。
(C)そう言いました、本当の事です。誰が言ったか覚えてませんが、アーティー・ショーだったか 「まともにプレイできる奴は居ないのか!」と。本当の意味でスィングしてくれて、インチューンで演奏できるミュージシャンは数少ないんです。

クリニックでも繰り返し言ってるんですが「ドラマーをフォローしろ、ベースをフォローしろ」と良く言いますが、フォローした時点で理論的にはすでにビハインドなんです。コンセプトは”一緒”ですから。フォローというのはあり得ないし「リードプレイヤーをフォローしろ」もあり得ない。くどいですがフォローした時点ですでに遅れている。次に何が来るのか予見してすでにそこに居ないといけないし、そこに来た時に自分だけなのか、他の誰かと一緒なのかとか、、お互いを瞬間的にコピーする事が自然にできて、タイミングもピッチも完璧に”一緒”になる、これがゴールです。

(I)カントリー、ロック、ポップと比べるとジャズは小さな存在で、グラミー賞はラッパーやカントリー、ロック、ポップだけで、ジャズのは放映しない。
(C)全くその通りです。ジャズがマイナーなのは、その素晴らしさが正しく伝えられていないからだと思います。ミュージシャンはスィングするという事、一緒にビートを刻むという事を忘れてしまっているという事実もあります。スウィングするという事について誰も研究してないし、教えられてもいません。スウィングしていれば自然に微笑むし、足も自然に動く。ライブならなおさらです。“It don’t mean a thing if it ain’t got that swing.”  デューク・エリントンの言葉通りです。

カップルがドライブしていてJazz Clubの看板を見つける。ちょっと聞いていこう、Jazzはあまり聞いた事ないし、、、中にはいるとアルトがスタンダードを吹いている、時々詰まりながらどこかで聞いたようなフレーズで、だがスィングしていない。この後どうなるかと言えば“Check Please!”です。これがJazz Clubで起こっている事です。ミュージシャンが売込みに来ればオーナーが雇ってしまう。オーナーが音楽を知らないからです。売込み上手=ベターミュージシャンとは限らない、ベターミュージシャンは概して内向的でセールストークは苦手な場合が多い、ただ彼らは趣味のいい、良いジャズを演奏します。

私はライブに行く事はあまりないのですが、友人がチケットをくれたのでカタリナにトニー・ウィリアムスを聴きに行きました。シンバルだけのソロだったんですが、背筋がゾクゾクしっぱなしでした。まだバンドが演奏してない、のにです。このまま椅子に溶け込んでしまうかと思う位、彼のドラムに聞き入ってしまいました。

(I)リードについて
(C)一番デカくてタフな人ではなくて、一番音楽性に優れた人であるべきだと思います。間の取り方や、ちょっとしたフレーズの吹き方もリード次第なので、その音楽をより理解していて、また趣味のいいアプローチを心得た人です。ただ、実際はなかなかこうはならなくて、ハイノートが得意で一番タフな人がリードになるって感じですね。

(I)影響を受けた人について
(C)最初にインスピレーションを受けたのは叔父のボビー・シャーウッドです。ベニ・バリガンやビックス・バイダーベックより上手かったし、ハーフバルブの使い方はファンキーでクラーク・テリーのようでした。1942年から47年にJazz Band Recordsからリリースされた彼のレコードを是非聞いてみて下さい。

叔母のキャロラインの夫のデイブ・ペルが結成したオクテットのドン・ファガークィストも大好きになりました。美しくて、みずみずしくて、流れるようにメロディ、そしてハッピーなトランペットはそう滅多に居ません。私はいつもドンみたいに吹きたいと思っていますし、トランペットプレイヤーは彼を見習って欲しいと思います。彼が私のスタイルを作ってくれました。

お客さんから時々「ちょっとドンみたいだったよ」と言われる時がありますが、とてもいい気分です。私が彼のスタイルを新しいレベルに引き上げたという人がいますが、そうかも知れませんが、今でも彼の演奏が大好きで聞いています。Listen To The Music Of Russel Garciaというレコードの、Boy Next Doorは素晴らしいです。彼のリーダーアルバムは2枚しかなくて、Eight By Eight(VSOP)とPortrait Of A Great Jazz Artist(Fresh Sounds)です。

ケニー・ダーハムも良く聴きました。彼は影の王者です。もの凄く繊細で美しいフレーズです。ジャズメッセンジャーズのカフェ・ボヘミアの中のライクサムワンインラブが一番好きです。もちろんフレディー・ハバードはジャズトランペットではヘビーウェイト級のチャンピョンですが。

そして、トロンボーンでカール・フォンタナです。私の呼吸法のコンセプトは彼から学びました。息の流れの最適なスピードを見つける事ができれば、最も柔軟な演奏ができるという事の身をもって実践しています。

ラスベガスのショーの仕事を始めた時、いろんなリードと演りましたが、家に戻って「今日のリードみたくは成りたくない、騒々しいだけだ」、「こんな演奏してはダメだという事、これが今日の学習だ」と自分に言う毎日でした。しかし、バディー・チルダーと演奏した時は違いました。彼はカール・フォンタナみたいで「ショービジネスのために、私のチョップを犠牲にしたくない」と言っていました。繊細でソフトなハイノートそしてフレキシビリティーを彼から学びました。


カール・サンダースはJazzの定義を”Intellectual funk with a hypnotic beat”と言っています。グーグルで翻訳すると「催眠ビートを持つ知的ファンク」となるんですが、これは下手に訳さないで、英語そのままの方がしっくりきますね。彼の良く歌う、メロディックなフレーズやリードの際の完璧なピッチからメロディーやハーモニーに言及するかと思いきや、スウィング感を力説しているのには驚きました。素人考えですが、タイムをマスターすれば、リラックスして自然に回りの音が良く聞こえる=フレーズも良くなるて事なんでしょうか。

いずれにしても、Carl Saunders is the One & Onlyです。

 

(参考記事)
カール・サンダースのインタビュー要約記事 Vol.1 
ジェリー・ヘイとアルトゥーロ・サンドバルの対談記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  • No products in the cart.