シルキー・フィーチャード・アーティストのスティーブ・ディラードさんにインタビューをしました。

ロサンゼルスから南にトップ・ガンの舞台だったミラマー空軍基地を過ぎて2時間走るとサン・ディエゴに到着します。シーワールドのすぐ近くに住むのシルキーのフューチャードアーティストでもあるスティーブ・ディラード氏にインタビューをしました。よく通る大きな声でゆっくり話すスティーブさんのサウンドは、やっぱり太く豪快、楽器はラージボアのセルマーK-Modifiedを使ってらっしゃいました。

Q:トランペットを始めたきっかけはなんですか?

A:9才の時に学校にバンドが来て演奏したんです。どんな曲だったか覚えてないんですが、音楽に合わせて忙しく伸び縮みする楽器で音がとにかく面白くて家にもどって父親に話したところ、それはトロンボーンと言う楽器との事で、近くの楽器店に行ってみようという事になりました。中古のキングのトランペットがあって、今でもその古臭い匂いを覚えてるんですが、吹いてみたらすぐに音が出たのでそれを買ってもらったのです。毎日練習して、そのうちにBumblebee  とかCarnival of Veniceなんかが吹けるようになったんです。

Q: ええ?! そんなに早く上手になったんですか?

A: 私は音感が良くて聞くだけで吹けるようになるんです。そのうちに父親がケノンのトランペットを買ってくれました。中古のキングに比べると素晴らしい楽器でした。父親の仕事の関係でガーデナからオクラホマ州のタルサに引っ越したんですが、そこの学校のバンドのオーディションを受けました。先生から私の歯が欠けているので不合格だと言われその事を母親に話すと、彼女は先生に電話して「息子の演奏は聞いたんですか?」と言ってくれたんです。翌日、演奏してみせると先生が「あなたは才能があるから、ちゃんと習いなさい」と言われて、タルサシンフォニーの3番トランペットのロジャー・フェン先生にレッスンを受けようになりました。

Q: トランペットの英才教育のようで、うらやましいですね。

A: ところが、15才の時にまた父親の転勤でカリフォルニアのトーランスに戻ってハイスクールのバンドに入ったんですが、ビーチにばかり行っていてトランペットの練習がおろそかになってしまったのでバンドを首になってしまったんです。そうこうしているうちローカルのバンドから声がかかって、ロック、ラテンなどいろんなバンドでプロとして演奏するようになったんです。1回のギャラは$65でした。

USOのバンドで1か月間日本にも行きましたよ。主にミリタリーのベースでの演奏でしたが。それからディズニーランドではウェイン・バージェロンと同じバンドでした。今でも彼は良き親友です。1970年代当時、ディズニーランドではダンス・ウィズ・ビッグバンドとしてバンドが連日演奏していました。ルイ・ベルソン・ビッグバンドにボビー・シュー、キャットアンダーソンが共演したり、ウディー・ハーマン、メイナード・ファーガソンなんかが出てました。

そしてある時、先輩のサック奏者からジャズのII-V-Iのコードを教わったんですが、その新鮮なサウンドの衝撃は今も忘れません。それからブルー・ミッチェル、ケニー・ドーハム、フレディー・ハバード、ドナルド・バードなどブルノートのトランぺッター達を聞きまくってコピーしました。

Q: ジャズに目覚めたわけですね。他にどんなミュージシャンに影響を受けたんですか?

A: クロッド・ゴードン(Claude Gordon)、デイブ・エバンス、ボビー・シュー、アルトロ・サンドバル(Arturo Sandoval)、パピー・ミッチェルなどにも師事しました。クロッド・ゴードンはどうも私には合わなかったんですが、パピー・ミッチェルは1920年代にパラマウント・スタジオのリードトランペットで当時80才を超えていましたが今も彼の教えは私のポリシーになっています。

例えば“Know before you blow”です。楽器を持って演奏する前にどんな音でどんな音楽を演奏するかを想い浮かべなさいという事です。そして”Think before you stink” 「失敗する前に考えろ」、Know before you blow と同じくちゃんと音が頭の中でイメージできていれば失敗しないという事です。3つ目は “10% Perspiration 90% Respiration” これはどうエアーを使うのか要するに呼吸法についてです。汗をかくのは10%、あとの90%は息のコントロールという意味です。彼の教えは凄く示唆に富んだものである意味でトランペットのメンターとも言える人でした。

ボビー・シューからは横隔膜を使った呼吸法を教わりました。これは7年前に実際に私に起こったことですが、ご紹介しましょう。私はずっと泳ぎが好きでサーフィンも趣味だったんですが7年前に水泳クラブに所属して1日に1.5マイルから2マイルくらい、週に4回泳いでいました。サンディエゴの海は水温が12度位で結構冷たいんですが、、、。3週間位たつと私にサウンドに変化が現れました。以前より豊かに大きくなりよりトーンにカラーが出てきました。「一体何が起こったんだろう?と思いましたよ」そして3か月後には音域がマイナー3度も広がったんです。High FからHigh Aという具合です。ボビー・シューが言っていた呼吸法が実際になったんだと思いました。

Q: 7年前というとあなたが50代の後半ですよね?失礼ですがその年齢でサウンドがリッチになりさらにレンジが3度も広がったというのは驚きですね!

A: 海が無いところに住んでる方も、サイクリングなんかでも呼吸法の改善ができるので、是非試してみて下さい。筋肉は何歳になっても鍛えることはできますから。

Q:今まで多くのトランペットを演奏して来られたと思いますが特に印象深いモデルは何ですか?

A: フレディー・ハバードのゴールドプレートのカリキオ3/9です。9リードパイプ、3ベルのラージボアです。暖かで素晴らしいサウンドでした。カリキオのポケットトランペットも印象に残っています。モデル番号は覚えてないんですがマウント・バーノンのバックにベンジにベルを付けてシルバープレートにしたものですが重厚でより明るい音になりました。これは売ってしまったんですが後悔しています。オールズ・スーパー・レコーディング、ベルとリードパイプがコッパ―なやつですが、これはなかなか手に入りません。あとサッチモが使っていたセルマーのバランストモデル23A、非常に吹きやすかったですね。セルマーは2011年にトランペットの製造を止めてしまったのは残念です。シルキーのフルーゲルホーン、これは素晴らしい楽器でした。

Q: これから新たにやってみたいことは何ですか?

A: 先日、亡くなってしまったんですが、アンソニー・ボーデインのTV番組を知ってますか?世界中の知られざるいろんな所に行ってフードを紹介する番組のホストでした。あと、デイヴィット・グロー(David Grohl)がやっているソニック・ハイウェイ―というTV番組、いろんな都市に行ってその地のミュージシャンのストーリーを紹介するやつですが、アンソニーとデイヴィットのトランペット版みたいなのをやってみたいですね。いろんな都市に行ってその地のトランぺッターにインタビューしながら音楽談義したり一緒のセッションをするなんてのをやってみたいですね。

あと、バックの軌跡を訪ねるアイデアです。最初のマンハッタンの82丁目の店、2番目の41丁目の工場、ブロンクスの3番目の工場、そしてマウント・バーノンの工場、最後はエルクハートですが、その時代に作られたバックのトランペットを持っていってそこで今と昔を比べて演奏するという、、お金にはなりませんが大変興味があって、私の夢のプロジェクトです。

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いろんな楽器を知り尽くしたスティーブさんですが、ご自身の楽器は2本ともセルマー、ピッコロはシルキーのゴールドプレートを使ってらっしゃいました。マウスピースはHT3とHT-Jazz、両方ともアルトロ・サンドバルが使っているバックのマウント・バーノン3Cと同じリムにしてあるのだそうです。最後に夢を語ってらっしゃいましたが、時間とお金があったらトランペットを引っ提げて是非スティーブさんのお供をしていろんな土地のトランぺッターを訪ねてみたいものです。何事にもポジティブなスティーブさん、楽しいこと請け合いです。


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